前回の記事で、お問い合わせ対応の「仕組み化」を解説しました。前回は、お問い合わせを単に顧客データ=コンタクトの中で確認してみましょうと解説しましたが、実はそれだけだと、複数の案件のどれがどこまで進んでいるのか、一目では分かりづらいです。
また、先月は?先々月は?と知りたい時、エクセルやスプレッドシートだと全体が見えづらいという欠点があります。もちろん工夫すれば把握できますが、余分な情報が多かったり、いちいちフィルターをかけないといけなかったり・・・。
そんな時、HubSpotのCRMには、「取引パイプライン」という機能があります。今回は、この取引パイプラインを使って、商談の進捗を見える化する方法を解説します。
取引パイプラインって何?
前回は「顧客データ」、今回は「案件データ」の管理
これまでの記事では、HubSpotのCRM機能における「顧客データ管理」について解説してきましたが、今回は「取引=商談」のデータ管理について説明します。
顧客データと取引データって何?なぜ分けるの?と思われるかもしれませんが、顧客は「誰」かのことをまとめたもの、取引は「何の仕事」かをまとめたものです。HubSpot CRMでは、この情報を分けて登録しましょう。
一見どっちも同じように聞こえるかもしれません。例を使って説明します。
たとえば、Aさんという顧客からBBBというウェブサイト制作依頼を受注しました。この時、Hub Spotの顧客データ=コンタクトに相当するのはAさんで、BBBのサイト制作は取引データです。
1年後に、再度CCCというサイト制作の依頼がありました。この時に、Aさん:BBBサイト制作 だけでなく、Aさん:BBBサイト制作+CCCサイト制作ということがわかると、これまでどういう案件があったのか、いつどれくらいの規模のものが合ったのか振り返りやすいですよね?
しかも、BBBは1年前になぜ受注できたのか、今回のCCCも受注できるためにはどうすれば良いのか、ということを見返したくなります。
このように、単純に「Aさん」にCCCサイト制作という情報を入れるのではなく、顧客と取引を分けてCRMで管理することで、後々自分の仕事を振り返ることができます。
パイプラインは案件のステータスを”流れ”で表現したもの
そして、お問い合わせから受注に至るまでは、いくつかのやり取り、ステータスがあると思います。そのステータスを、流れで表現したものが取引パイプラインです。
たとえば、
- 問い合わせ発生→アポイント取得→見積もり中→受注
のような流れを、ボード形式で視覚的に把握することができます。ステータスの移り変わりも、ドラッグ&ドロップで簡単に操作できます。
また、HubSpotの無料プランでは、このパイプラインが1つだけ利用可能です。こういった取引のステータス管理が別のツール(たとえばTrelloやNotion)などになってしまうと、一気にデータが分散されて「あれはこっちに、それはこっちに」となって続かなくなってしまいます。
たとえ無料プランでも、HubSpot CRMは必要な機能が揃っているのが良いところです。複雑な業種でなければ、1つで十分でしょう。
フリーランスに適したパイプライン設定
ここからは、フリーランスの方、特にHubSpotの無料プランの利用を考えているフリーランスの方向けのHubSpotの取引パイプライン設定を紹介します。
シンプルな5ステージ構成
取引の流れは業種や商習慣によってまちまちなので、全てを解決するベストな設定があるわけではありません。そのため、HubSpotのデフォルトの設定で試しに使ってみるのも良いでしょう。
- アポイント設定済み
- 購入見込みあり
- プレゼン予定済み
- 意思決定者の賛同
- 契約書送付済み
- 成約
- 不成立取引(=失注)
ただ、大きい営業組織が、それなりの金額の製品、サービスを提供するような、少し仰々しいステージになっています。そのため、フリーランスの方が初めて使うには、以下のシンプルな5ステージ構成をおすすめします。
- 未対応
- アポイント設定済
- プレゼン設定済
- 見積もり送付済
- 受注
- 失注
まず、引き合いがあった直後は全て未対応ステージで作成します。そこからアポを取得したら2へ。プレゼンなど、詳細打ち合わせがあれば3へ。その後、見積もり送付し受注、または失注へという流れとしています。
場合によってはプレゼンもなく、2→4に行くこともあるかもしれませんが、そのあたりは柔軟にカスタマイズしてください。
結局、ツールを使いこなすにはシンプルであることが一番です。まずは、1.手をつけていない、2.手を付けている、3.受注という大きな流れを考え、そこからできる範囲で細かくしていきましょう。
ステージ移動のタイミング
また、細かな点ですが、ステータスの名前も少し工夫しておくと、どうしたらステージを移動したら良いのかがわかりやすくなります。
たとえば、見積もり送付済や、契約書送付済など、自分がアクションをしたらステータスを移動して、先方からの対応待ちというふうにしておくと余計なことを考えずに済みます。
成約率はフリーランスには不要
HubSpotにはデフォルトで、ステージごとに成約確率を設定できますが、あくまで規模の大きい営業チームが多くの案件からの予想受注額、受注数を見積もるために使うものなので、1人運用であれば使う必要はありません。
目安くらいに使う分にはいいですが、HubSpotは企業向けである分細かな設定項目が豊富にあるので、それらに凝りすぎないようにしましょう。目的は、自身の仕事の仕組み化です。
【コラム】案件が少なくても使う価値はある?
自分はフリーランスでコンスタントに依頼を受けることができているけど、月1~2件くらいだから、パイプラインなんか使わなくても十分管理できるという方もいるでしょう。
確かに、実際にはわざわざHubSpotで管理しなくてもなんとかなることも多いかと思います。HubSpotの機能も、大手企業の利用を想定した機能が多いので、逆に使いづらいものもあります。
ただ、今は不要でも、こういった仕組み化は後々効いてきます。何より、HubSpotに登録しているのだからあとは忘れてOK=本業に集中できるようになります。
取引データを管理・分析することはフリーランスがHubSpotを利用する目的ではありません。それは大きい組織がやること。フリーランスが取引データを管理するのは、面倒なこと、覚えておかないといけないことをHubSpotという仕組みに任せて、本業に集中することです。
面倒かもしれないけど、こうしたちょっとした工夫・仕組み化を積み重ねていくことで、余計なことに煩わされないようになると思っています。
運用のコツ:こうすると使い続けられる
取引パイプラインを設定したら、それを使い続けるためのちょっとしたTipsを紹介します。
週1回、パイプラインを見直す習慣を
週に一度、取引パイプラインを見直す習慣をつけましょう。大きな組織なら、毎朝のミーティングでチェック、となるかもしれませんが、フリーランスなら週1程度で十分です。月曜日の朝、10分だけ使って取引パイプラインをチェックして、遅れているタスク、先方からの返事が滞っているタスクを確認する習慣を作って、他の時間は本業に集中します。
顧客データ(コンタクト)との連携
単に取引データを作るだけだと、あまり効果はありません。顧客データと紐づけることで、誰からの案件がいくつあったかが分かるようになり、それはリピートしてくれる人がどれくらいか分かるということでもあります。
【発展編】有料プランならもっと便利に
ここまではHubSpotの無料プランにおける取引パイプラインの使い方を紹介しましたが、もちろん有料プランならもっと便利に、いろいろなことができるようになります。
発展編として、どんなことができるようになるか少しだけ紹介します。
ステージ移動で自動メール送信
ステージの移動に合わせて、自動化処理を設定することができます。たとえば、自分1人ではなく業務委託をしている人や協働パートナーがいるなら、ステージを移動したらその人に自動メール送信する、といったことが可能です。
ステージの移動を厳密に
他にも、ステージの移動をスキップできないようにしたり、ステージの逆戻りをできないようにしたり、移動を厳密にすることが可能です。
人数の多いチームにおいて統制が取れデータの信頼性が増すのはもちろんのこと、各自が正しいステップを踏むことを身に付けることができるようになります。
でも無料プランで十分
繰り返しになりますが、HubSpotの無料プランでもパイプラインを使ってステージを管理することは可能です。フリーランスなら無料の範囲で十分使いこなすことができると思いますのでご安心ください。
まとめ:パイプラインを使って取引を見える化しよう
本記事では、取引パイプラインの活用方法について解説しました。
小規模のビジネスでは、活用しなくとも商談の管理は可能かもしれません。ただ、1人でやっている場合に必要になってくるのは、いかに本業以外のことに時間を取られず、本業に集中できるかだと思います。
本業に集中するために、余計な管理・覚えをHubSpotの取引パイプラインに任せてしまいましょう。
もし設定で迷うことがあれば、無料相談もやっていますので、お気軽にご相談ください。

